5歳くらいになると嘘をつく子もいます。
嘘にだまされる人もいれば、自分の子どもに嘘をつかれたとショックを受ける人も……
ただ嘘にもいろいろな嘘があります。
いい嘘、悪い嘘を見抜いて的確に関わっていくことが必要ですね。
そこで今回は子どもの嘘とその対処法についてまとめていきたいと思います。
【大人に対して嘘をつく時の心理】
子どもが大人に対してなぜ嘘をつくのか?理由はさまざまです。一般的な心理の一部を以下に挙げてみましょう。
- 自己保護: 子どもは時折、叱られたり罰せられることを避けようとして嘘をつくことがあります。怒られることを恐れたり、制裁を受けたくないと考えることが動機となります。
- 欲望の達成: 何かを得たいとき、または親に反対される行動を隠すために嘘をつくことがあります。例えば、お菓子をこっそり食べたり、友達との行動を隠したりすることが挙げられます。
- 自尊心の維持: 失敗やミスを避けたいという自尊心の動機も影響を与えることがあります。嘘をついて自分を守り、他人の期待に応えたいと考えることがあります。
- 評価への不安: 親や教師からの評価や期待に不安を感じ、それを避けるために嘘をつくことがあります。自分が期待に応えられないことを恐れることが原因となります。
親は子どもとのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を築くことが重要です。子どもにとって安心感があれば、嘘をつく必要性が減り、オープンな対話が促進されることがあります。
【子どもの嘘の4つのタイプ】
空想の世界の嘘
幼児期は、空想の世界と現実の世界の境界線がはっきりしないことがあります。
現実にはないにもかかわらず、本当にあったかのように思い込んでしまい嘘を言うこともあります。
ファンタジー性のあるようなかわいい嘘が空想の世界の嘘でです。
願望から生じる嘘
子どもが心で願う「こうなったらいいな」という強い思いからついてしまう嘘があります。
例えば、飼っていないのに「ネコを飼っている」とか、予定もないのに「飛行機で旅行に行く」などの嘘は、「本当にそうなればいいな」という気持ちが表れた嘘だと言えます。
承認欲求からつく嘘・叱られたくないからつく嘘
「発表会で主役に選ばれた!」「かけっこで1番だった!」など、親にほめてもらいたい、認めてもらいたいという承認欲求の気持ちから嘘をつくことがあります。
また、自分で悪いことをしたと理解していても、大人から叱られないようにする保身のための嘘もあります。
「なんでそんなことしたの!」と叱られた時に、自分を守るためとっさにその場を取り繕うような嘘が保身のための嘘です。
大人の関心を引きたいためにつく嘘
イソップ童話にもある「オオカミがきた!」と叫ぶオオカミ少年と同じです。
子どもの心には大人の関心を引きたい、自分を見てもらいたいという願望があり、その願望からつく嘘があります。
【心の成長】
2歳ごろに見られる嘘は、空想や願望からつく嘘が多いです。
「保育園の給食は、ジュースとアイスだった」など、ジュースやアイスをたくさん食べたいという思いから言っているだけで、幼児期にはありがちなかわいらしい嘘です。
3~4歳ごろになると、実際と違うとわかって嘘をつくことが増えてきます。
例えば「叱られたくない」という心理。
親に一方的に叱られるだけではなく、どうすれば自分を守れるか……
そう考えられるようになるのは、一つの成長の証とも言えますね。
5歳くらいになると、自分以外の相手の心の理解ができるようになってきます。
相手の気持ちを想像したり、自分と相手の気持ちの違いに気づいたりします。
また、相手の気持ちを推し量って行動できるようになります。
小学生、思春期は、自主性や主体性が芽生えてくる時期です。
「親に心配をかけたくない」、自尊心も生まれて「プライドを傷つけたくない」ために嘘をつくようになります。
【見逃してよい嘘、見逃してはいけない嘘の見分け方】
自分も相手も傷つけない嘘
誰も傷つけない嘘です。
ドラマやお笑いのコントなど、お互い嘘と分かって楽しめる嘘です。
その他にも相手のことを思って「見て見ぬふりをする嘘」もあります。
子どもの場合、空想を真面目に語って大人や友だちの気を引いたり、びっくりさせようとするための他愛のない嘘が、自分にも相手にもプラスになる嘘と言えます。
相手のために自分を犠牲にする嘘
相手が怖かったり、かばおうとしたりして自分を偽る嘘などがこれにあたります。
友だちをかばおうとして「自分がやった」とつく嘘や、親から虐待を受けていても親をかばおうとして「自分は叩かれていない」という嘘、親に心配をかけたくないために「学校でいじめられていない」と言い続ける嘘も、相手のために自分を犠牲にする嘘といえます。
相手も自分も傷つける嘘
子どもが自暴自棄になったときにつく嘘です。
本当は大好きなのに、親や友だちに「大嫌い」というような嘘です。
嘘を言われた相手も、本心とは逆の言動により自分も傷つける嘘です。
相手を傷つけて自分を守る嘘
自分の利益のために相手を利用したり、陥れたりする嘘がこれにあたります。
子どもの場合は「私じゃなくて、○○ちゃんが押したからあの子がケガをした……」など、自分の失敗を人の責任にするような嘘です。
自分を守るために他の人を傷つける結果を招きます。
【嘘をついた場合の8つの対処法】
嘘とわかっていても子どもの話を聞こう
この時期の子ども(5~6歳)は、親の関心を引きたかったり親に甘えたかったりして嘘をつくことがあります。
親は嘘とわかっていても、子どもに付き合って話を聞いてあげてください。
聞いてもらえるだけでも気持ちが満たされるものです。
しっかりと話も聞かず、頭ごなしに叱ったり、誤らせたりするのはNGです。
また矛盾点を指摘する必要もありません。
理由を聞くのはいいですが、厳しく問いただしてしまうと委縮して本当のことが話せなくなります。
結局根本的な解決をすることができなくなってしまいます。
逆に嘘を助長してしまうことにもなり兼ねません。
子どもの気持ちに寄り添ってあげて
例えば「飛行機で旅行に行くんだ!」という嘘が友だちにバレて子どもが傷ついた場合、「そうか、本当は旅行にいきたかったんだね。ごめんね、連れていってあげられなくて……」と子どもの気持ちに寄り添ってあげてください。
大人がそのようなサポートをすることで、実際に旅行に連れていくことができなくても子どもの心は満たされるでしょう。
生活習慣の嘘はだまされたフリを
子どもはまだ歯磨きをしていないのに「もう磨いた」などと嘘をつくこともよくあります。
このような嘘は「面倒くさい」「他にやりたいことがあった」など、子どもなりに手を抜きたかったというケースが想像できます。
こんな時はどうしたらいいの?
こんな時は「よかった、ちゃんと磨けたんだね。虫歯になったら痛いから嫌だもんね」とだまされたフリをしましょう。
そして、なぜ歯を磨かないといけないのかをさり気なく伝えましょう。
大人の言葉で気づき、自分から「ちゃんと磨いてこよう」と子どもが行動を正せばそれでよいのです。
大人が嘘を見逃したり、騙されたフリをしたりすると「子どもはますます嘘をつくようになるのでは?」と心配になりそうです。
でも、通常この時期の子どもは、大人の様子から「嘘はバレている、もう嘘をつくのはやめなきゃ……」と気づいていることが多いのです。
子どもに厳しくしすぎていませんか?
これまでの内容を踏まえたうえで、子どもに厳しくしすぎていないか振り返ってみましょう。
例えば……
「もう小学生になるんだから」と子どもに過度の負担をかけていませんか?
子どもは「親の期待に応えたい」「叱られたくない」という思いから嘘をつくこともあるのです。
どうして嘘はいけないのか、きちんと理解させる
嘘をついてはいけない理由を子どもに分かりやすく伝えることも必要です。
- 嘘をつくのがクセになってしまうと、そのうち誰からも信頼されなくなり、自分の居場所がなくなってしまうこと
- 嘘が人を傷つけること
- 結局は自分に返ってくること
などを説明しましょう。
合わせて、正直でいることは周りからも信頼され、自分自身も精神的に健康でいられるというメリットも伝えてあげるといいですね。
また子どもがついた嘘を責めるのではなく、絵本や昔話を題材にして嘘についてきちんと説明するのもよいでしょう。
大人は「嘘にはいろんな嘘がある」と頭で分かっていても、子どもに説明するのは難しいものです。
そんな時は、嘘を題材にした絵本で子どもと一緒に嘘についてしっかりと考えてみるのもいいですよ。
『ゆっくとすっく うそはちくちく』(ひかりのくに)
『ほんとうのことを いってもいいの?』(BL出版)
リピーはお母さんに嘘をついて友だちと遊びに行こうとしました。
はじめてお母さんについた嘘。
おなかが苦しくて、涙があふれて……。
その日から、リピーはほんとうのことだけを言おうと誓います。
ところが、正直になろうとすればするほど、友だちを傷つけてしまうことになり、リピーは混乱します。
単なる正直ではなく、まず相手の気持ちを思いやること。
大きな子向けに、大切なメッセージが伝わる一冊です。
本当のことを言った時、叱らないようにする
嘘をついた子どもに、「絶対に叱らないから本当のことを話して」と言い聞かせることってありますよね。
それで子どもが本当のことを言った場合は叱ってはいけません。
まずは子どもが正直に話したことを認めてあげてください。
それから「悪かったのは何か」「なぜ嘘を言ってしまったのか」などの理由を聞いて、今後同じような場面があったらどうしたらよいか、子どもと一緒に考えてあげて下さい。
親が子どもに誠実な態度を心がける
自分や相手に正直であることは大切ですが、嘘を見抜く力も必要です。
嘘を見抜くためには嘘をついた経験がないとできません。
子どもは成長の過程で秘密を持ち、秘密を持つために嘘をつくことがあります。
でも、嘘をついた結果、どのようなことがもたらされたかを振り返り、嘘が自分や相手に与える影響について子ども自身が考える機会にすることがなによりも大切です。
大人の気持ちもしっかり伝える
「嘘をつかれて悲しかった」「残念だった」と、大人の気持ちを素直に伝えることも大切です。
子どもは自分のついた嘘がどれ程の影響を与えたのか、自覚する必要があります。
大人が気持ちを包み隠さず話すことで、子どもも正直に話そうという気持ちになっていくことと思います。
【まとめ】
嘘をつかない子どもを育てるよりも、嘘をつこうと考えた時に「後ろめたさ」や「罪悪感」を感じて、嘘をつかないでいられる強い気持ちをもてる子どもに育てることを目指すのが理想ですね。
そのためには、大人自信が手本となり、自分の気持ちをごまかしたり、嘘をついたりしない誠実な態度を見せることが必要です。
子どもは大人の背中をよく見ていますね。
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