3歳になってから、急にトラブルが増えた気がする。
さっきまで笑っていたのに、急に泣き崩れる。
園から「最近ちょっと衝突が多くて…」と言われて、胸がざわつく。
話せるのに守れない。
分かっているのにやらない。
順番も理解しているはずなのに、待てない。
「2歳のほうがまだ扱いやすかったかも…」
そんなふうに感じてしまう日もあるかもしれません。
でもそれは、成長が止まったわけでも、退化したわけでもありません。
3歳は、目に見えにくい力が大きく伸びる時期です。
言葉の理解。
他者を意識する力。
ルールという概念。
想像する力。
それらが一気に広がるからこそ、心の中は大渋滞。
「分かるけどできない」という葛藤が増えるのです。
目立つのはトラブル。
でもその裏で、確実に育っているものがあります。
この記事では、3歳の“見えにくい成長”を保育士の視点で整理しながら、
「うちの子、大丈夫かな」という不安を、少し安心に変えていきます。
3歳の成長はなぜ「問題」に見えやすいのか
3歳になると、急に「手がかかる」と感じる場面が増えることがあります。
でもそれは、成長が後退しているからではありません。
むしろ――
できることが増えたからこそ、目立つ“揺れ”がある。
ここでは、「なぜ3歳は問題に見えやすいのか」を整理していきます。
できることが増える=期待が上がる
3歳になると、こんな姿が増えてきます。
・会話が成立する
・トイレができる子もいる
・簡単なお手伝いができる
・「順番」という言葉を理解している
一気に“できる子”の要素が増えます。
すると大人の中で、こんな期待が生まれます。
・もう分かるよね?
・さっき説明したよね?
・前もできたよね?
期待が上がるのは自然なことです。
でも、子どもの発達は一直線ではありません。
実際は、こんな波があります。
| 大人の見え方 | 子どもの内側 |
|---|---|
| 昨日できたのに | 今日は疲れている |
| 分かっているはず | 気持ちが強すぎる |
| 守れるはず | 切り替えが追いつかない |
期待と現実のギャップが広がるほど、
行動は「問題」に見えやすくなるのです。
心はまだ未完成
体は大きくなり、言葉も増え、見た目はすっかりお兄さん・お姉さん。
でも心の土台は、まだ発達の途中です。
3歳の心の特徴は――
・気持ちの切り替えは練習中
・我慢は短時間が限界
・疲れると一気に崩れる
・うまく言えずに怒りで出る
大人から見ると「わがまま」に見える行動も、
実は処理しきれなかった感情のあふれ出し。
3歳は
「大きく見える未完成」。
ここを見誤ると、必要以上に厳しくなってしまいます。
理性と感情の衝突が起きる時期
3歳の本質はここにあります。
理解はできる。
でも、感情が勝つ。
その代表例がこちらです。
| 理性(分かっている) | 感情(止められない) |
|---|---|
| 順番を理解している | でも待てない |
| 叩いてはいけないと知っている | でも怒りで手が出る |
| お友達の気持ちを想像できる | でも自分の気持ちが最優先になる |
| ルールを覚えている | でも悔しさで破る |
これは「分からない」のではありません。
分かるようになったからこそ、葛藤が生まれている。
理性というアクセルが強くなった。
でも、感情のブレーキはまだ発達途中。
アクセルだけが先に成長している状態です。
だから荒れる。
それは失敗でも、育て方の間違いでもありません。
発達の途中で必ず通る、自然な揺れなのです。
3歳のトラブルは、未熟さの証拠ではありません。
伸び始めた力と、まだ追いつかない力。
その差が“ズレ”として見えているだけ。
そのズレこそが、いま確実に育っている証拠なのです。
3歳で伸びている“見えにくい4つの力”
目立つのはトラブル。
でも、その裏側では確実に育っている力があります。
3歳は「できる・できない」よりも、
“何が伸び始めているか”を見ることが大切な時期です。
ここでは、保育の現場で実感する4つの成長を整理します。
① 言語理解が急成長している
3歳は、いわゆる語彙爆発期。
・語彙が一気に増える
・二語文〜三語文が安定する
・「どうして?」「なんで?」が増える
・複雑な指示(2〜3段階)が分かる
理解力は、確実に伸びています。
ただし――
理解が伸びると、こんな変化も起きます。
| 伸びた力 | 目立つ変化 |
|---|---|
| 言葉で説明できる | 口答えが増える |
| 理由を理解できる | 納得できないと反発する |
| 自分の気持ちを言える | 言い合いになる |
口答えは、反抗ではなく
言語力の成長の証拠でもあります。
② 他者意識が芽生える
2歳までは「自分中心」の世界。
3歳になると、少しずつ世界が広がります。
・友達を意識する
・先生の評価を気にする
・「〇〇ちゃんはできるのに」と比べる
・負けると悔しがる
・嫉妬する
これは、他者の存在を強く感じられるようになった証拠です。
成長の変化をまとめると――
| 2歳まで | 3歳ごろ |
|---|---|
| 自分が主役 | 友達も意識する |
| 取られたら怒る | 比べて悔しがる |
| 気持ちは単純 | 感情が複雑化する |
トラブルが増えるのは、
社会性が芽生えているサインでもあります。
③ ルール概念が育ち始める
3歳は「ルール」という言葉が意味を持ち始める時期です。
・順番を理解している
・並ぶ意味が分かる
・ダメな理由を聞けば理解できる
けれど、ここが重要です。
| 理解 | 実行 |
|---|---|
| 分かっている | でも待てない |
| ルールを知っている | でも守れないときがある |
| ダメと理解できる | でも感情が勝つ |
理解と実行は別物。
頭では分かる。
でも感情が追いつかない。
このズレが、親から見ると「問題」に映るのです。
④ 想像力が広がる
3歳は、想像の世界が一気に広がります。
・ごっこ遊びが高度化する
・見立て遊びが増える
・ストーリーを作る
・「もしも」を考える
しかし、想像力の発達は
楽しい面だけではありません。
・暗闇が怖くなる
・怪我を想像して不安になる
・怒られる場面を思い出して泣く
想像できるからこそ、不安も増える。
| 想像力の成長 | 親からの見え方 |
|---|---|
| ごっこ遊びが発展 | おしゃべりが止まらない |
| 未来を考える | 心配性に見える |
| 失敗を思い出す | 引きずっているように見える |
実はこれも、
心の世界が広がった証拠です。
3歳は、見た目の落ち着きよりも
内側の発達が大きく進む時期。
トラブルが増えるのは、
力が伸びている途中だから。
「問題」ではなく、
「成長の揺れ」と捉えられると、
見える景色が少し変わってきます。
「できるのにできない」が起きる理由
3歳の子どもを見ていると、こんな場面が増えます。
「分かっているのに、やらない」
「約束したのに、守れない」
「さっき成功したのに、今日は崩れる」
これは甘えでも、わざとでもありません。
理由は、大きく3つあります。
① 前頭葉はまだ発達途中
感情をコントロールしたり、衝動を抑えたりする役割を担うのが前頭葉です。
しかし3歳では、まだ成熟していません。
前頭葉が担う主な働きは――
・衝動を止める
・順番を待つ
・気持ちを切り替える
・ルールを守り続ける
これらはすべて「高度な力」。
3歳は、ちょうど“練習が始まった段階”です。
② 感情制御はまだトレーニング中
3歳の内側では、こんなことが起きています。
| 状況 | 子どもの内側 |
|---|---|
| おもちゃを取られた | 悔しさが一気にあふれる |
| 注意された | 恥ずかしさ+怒りが混ざる |
| 思い通りにならない | パニックに近い感覚になる |
大人は「落ち着いて話せば分かる」と思いますが、
実際には――
感情がMAXのときは、理性がほぼ停止状態。
だから、
・分かっているのに手が出る
・謝りたいのに泣き続ける
・やめたいのに止められない
ということが起きます。
③ 「分かる」と「できる」は別物
ここが最大のポイントです。
| レベル | 内容 |
|---|---|
| 理解 | 順番という概念を知っている |
| 実行 | 実際に待ち続けられる |
| 継続 | 気分に左右されず守れる |
3歳は今、
理解の段階が伸び始めたところ。
でも、実行と継続はまだ不安定。
そのズレが「できるのにできない」に見えるのです。
発達障害との違いが気になる方へ
トラブルが増えると、
「うちの子、大丈夫かな?」
と心配になるのは自然なことです。
まず知っておきたいのは、
3歳は“発達の波が最も大きい時期”ということ。
一時的な揺れと、継続的な困難は別です。
様子見でいいケースと相談の目安
多くの場合は、成長の揺れの範囲内です。
ただし、以下が続く場合は一度相談してみてもよいでしょう。
・極端な睡眠障害が長期間続く
・強い自傷行為が頻繁にある
・集団生活が著しく困難で、ほとんど参加できない
・言葉の理解が極端に乏しい
目安を整理すると――
| よくある3歳の揺れ | 相談を考える目安 |
|---|---|
| 感情の爆発がある | 自傷が頻繁で止められない |
| 友達と衝突する | 常に孤立し関われない |
| ルールを守れない日がある | ほぼ毎日著しく困難 |
ポイントは、程度と継続性です。
ほとんどの子は、
揺れながら少しずつ落ち着いていきます。
不安なときは、一人で抱え込まず、
園や自治体の相談窓口に話してみるだけでも十分です。
「できるのにできない」は、
未熟さの証拠ではありません。
伸び始めた理性と、
まだ強い感情のバランス調整中。
3歳は今、
“心のブレーキ”を練習している最中なのです。
保育士が見ている“成長のサイン”
保護者の方が「困った」と感じている行動も、
保育の現場では少し違って見えることがあります。
私たちが見ているのは、
“できていない部分”よりも、
その奥で動き始めた力です。
ここは、ぜひ安心してほしいパートです。
① トラブルの“質”が変わっている
3歳になると、トラブルそのものは増えることがあります。
でもよく見ると、内容が変わっています。
| 2歳ごろ | 3歳ごろ |
|---|---|
| 取られたらすぐ手が出る | 「それぼくの!」と主張する |
| 泣いて終わる | 言い合いになる |
| 理由は分からない | 理由がはっきりしている |
トラブルが増えた=悪化ではありません。
“衝動”から“主張”へ変わっているなら、それは成長です。
② 言い返せるようになった
「でも!」
「だって!」
この言葉に、疲れてしまうこともありますよね。
でも実は、ここにも成長があります。
・自分の考えを持ち始めている
・納得したい気持ちが芽生えている
・言葉で対抗しようとしている
2歳の頃は、泣く・叩くが中心だった子が、
今は“言葉”でぶつかろうとしている。
これは大きな前進です。
③ 理由を説明しようとする
叱られたあと、こんな姿はありませんか?
・「〇〇ちゃんが先にやったの」
・「わざとじゃない」
・「ぼくもやりたかった」
うまく話せないけれど、
一生懸命説明しようとする。
それは、
| 表に見える姿 | 内側で起きていること |
|---|---|
| 言い訳している | 自分の行動を振り返っている |
| 反発している | 理由を整理しようとしている |
| 長く話す | 状況を再現しようとしている |
自分の行動を“言語化”しようとしている時点で、
認知の発達は確実に進んでいます。
④ 悔し泣きが増える
3歳になると、
・負けて泣く
・できなくて怒る
・「もうやらない!」と投げ出す
こんな姿も増えます。
でもこれは、
自分と他者を比べられるようになった証拠。
悔しさが生まれる背景には、
・できるようになりたい
・認められたい
・負けたくない
という、前向きなエネルギーがあります。
ただ、その気持ちを処理する力がまだ追いつかない。
だから涙になるのです。
保育士が見ているのは、
・衝動から主張への変化
・手から言葉への変化
・無意識から振り返りへの変化
トラブルが増えたように見えても、その“質”が変わっているなら、それは間違いなく成長のサイン。
困った行動の裏には、必ず育っている力があります。
そこに気づけると、少しだけ、見え方が変わります。
家庭でできる関わり方
3歳は「できることが増えた時期」。
だからこそ、関わり方が少し変わるだけで、子どもの安定度は大きく変わります。
ポイントは、直すことより、整えること。
今日からできる関わり方を具体的にまとめます。
① 「もう3歳」ではなく「まだ3歳」
イライラが強くなる瞬間、心の中でこう置き換えてみてください。
× もう3歳なんだから
○ まだ3歳だもんね
視点を変えるだけで、声のトーンが変わります。
| 大人の見方 | 言い換え例 |
|---|---|
| なんでできないの? | まだ練習中なんだよね |
| さっきできたでしょ | 今日は疲れてるかもしれないね |
| 何回言えば分かるの? | 分かってるけど難しいんだよね |
期待をゼロにするのではなく、
発達段階に合わせることが大切です。
② 感情を言語化してあげる
感情が爆発しているとき、子どもはうまく言葉にできません。
そこで大人が“通訳”になります。
・悔しかったんだね
・先にやりたかったんだよね
・びっくりしたんだよね
・イヤだったんだよね
感情を代弁してあげると、
| 代弁がない場合 | 代弁がある場合 |
|---|---|
| 泣き続ける | 少しずつ落ち着く |
| 手が出る | 言葉に変わる |
| パニックになる | 話を聞ける状態になる |
「ダメ」と止める前に、
まずは気持ちを言葉にする。
これだけで衝突はかなり減ります。
③ 失敗させる勇気
3歳は、失敗から学ぶ時期。
でも大人はつい、先回りしてしまいます。
・危ないからやめよう
・時間がないからママがやるね
・どうせできないから手伝うね
その結果、「できない経験」だけが残ることも。
成長を促す関わりは――
| 先回り型 | 見守り型 |
|---|---|
| 失敗させない | 失敗させてフォローする |
| 早く終わらせる | 時間を確保する |
| 正解を教える | 考える時間を与える |
失敗=ダメではありません。
失敗=経験値。
「うまくいかなかったね。でもやってみたね。」
この一言が、自己肯定感を育てます。
④ 伸びている途中を見る声かけ例
できない部分ではなく、
“途中”に目を向ける声かけがポイントです。
具体例をまとめます。
・さっきより待てたね
・泣いたけど手は出なかったね
・ちゃんと理由を話せたね
・最後までやろうとしたね
声かけのコツは、
| NG例 | OK例 |
|---|---|
| なんでできないの | どこまでできたかな? |
| ほら、また | 今回はここまでできたね |
| ダメでしょ | 次はどうする? |
完璧を求めるより、
“伸び始め”を見つけること。
3歳は完成を目指す時期ではなく、
芽が出始めた時期です。
関わり方が変わると、
子どもの荒れ方も少しずつ変わっていきます。
次は、この記事のまとめに入ります。
まとめ
3歳は、できるようになった年齢ではありません。
できることが増え始めた年齢です。
話せるようになった。
理解できるようになった。
友達を意識できるようになった。
でも――
感情のブレーキは、まだ練習中。
だからこそ、
・分かるのにできない
・守れるのに守れない
・優しくしたいのにできない
そんな揺れが起きます。
トラブルが増えたように見えるのは、成長が止まったからではありません。
むしろその逆。
内側で大きな力が伸びているから、バランスが一時的に崩れているだけ。
保育の現場で見ているのは、「できない姿」よりも「伸びようとしている途中の姿」です。
完璧にできることよりも、昨日より少し変わったこと。
手が出る代わりに、言葉が出たこと。
泣きながらも、最後までやろうとしたこと。
そこに目を向けられたとき、見える景色は変わります。
3歳は
できるようになった年齢ではなく「できることが増え始めた年齢」。
伸びているから揺れる。
揺れているから育っている。


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