子どもが遊びに夢中になっているとき、「〇〇ちゃん」と名前を呼んでも反応がない…そんな経験はありませんか?
実はこの「名前を呼ばれて返事をする」という日常のやりとりは、子どもの成長にとってとても大切な意味を持っています。
返事を通じて身につく力や、子どもへの効果的な関わり方について詳しく解説します。
なぜ「名前を呼ばれて返事をすること」が大切なの?
人との関係づくりの第一歩
名前を呼ばれて反応することは、人と関わる最初のステップです。相手の存在に気づき、自分も応える。このやりとりが、信頼関係を築く土台になります。
集団生活や学校生活の準備
幼稚園や学校では、先生の呼びかけに応じて行動する場面がたくさんあります。返事ができることで、スムーズに集団生活に適応できます。
自分が大切にされていると感じる
名前を呼ばれることは、「あなたに話しかけているよ」というメッセージ。呼ばれて返事をすることで、子どもは「自分は大切にされている」と感じられます。
遊びを中断して返事をすることで身につく5つの力

「名前を呼ばれて返事をする」ことは、ただの返答ではありません。子どもが遊びを中断して大人の呼びかけに応じるという行動の中には、実に多くの成長のエッセンスが詰まっています。
1. 注意の切り替え力(認知柔軟性)
夢中になっている遊びから大人の声に注意を向けるというのは、実はとても高度なスキルです。この「認知の切り替え」ができるようになることで、集団生活の中でも場面に応じた行動を選べるようになります。先生や保護者の呼びかけに気づき、反応できる子は、トラブルを回避したり、切り替え上手な子に育ちやすいのです。
2. 聞く力(傾聴力)
呼びかけに気づき、耳を傾ける経験を重ねることで、相手の話を「聴く力」が育ちます。これは将来の学習、対人関係の基礎になる大切な力です。「聞くこと」は「学ぶこと」への第一歩でもあります。
3. 自己抑制力(衝動コントロール)
「今これをやりたい!」という衝動を一時的に抑え、「はい」と返事をしてから次の行動に移る。このプロセスは、子どもにとって自己コントロールを学ぶ絶好の機会です。我慢や順番を待つことが苦手な子でも、返事を通じて少しずつ自己抑制力を養っていけます。
4. 社会性・ルールの理解
「呼ばれたら返事をする」というシンプルなやりとりを通して、子どもは社会の中での基本的なマナーやルールを学んでいきます。特に保育園や幼稚園の集団生活では、指示を聞く・応じるという行動が必要不可欠。返事をする習慣がある子どもは、自然と集団の中でのルールにも適応しやすくなります。
5. ワーキングメモリ(記憶力・作業記憶)
返事をしたあと、言われた内容を覚え、それに従って行動する。この流れの中で鍛えられるのがワーキングメモリです。例えば「〇〇ちゃん、これ終わったらトイレに行こうね」という言葉に反応して行動できるようになることは、記憶力と実行力の両方を伸ばすことにつながります。
返事ひとつに、これほどまでに多様で大切な力が含まれているということを、ぜひ保護者の方や幼稚園・保育園の先生方に知っていただきたいと思います。
子どもに返事を身につけてほしいときの関わり方
大人がまずお手本に
大人自身が名前を呼ばれたときに明るく返事をする姿を見せることで、子どもは自然と真似をします。
簡単な場面から練習
静かな環境でのやりとりや、名前を呼んで「〇〇ちゃん、はいって言ってみようか」と優しく声をかけることで、少しずつ慣れていきます。
遊びの中で楽しく練習
「お返事ゲーム」や「お名前リレー」など、遊びに取り入れることで、楽しみながら返事の習慣が身につきます。
無理強いはしない
返事ができないときに叱ったり無理にやらせるのは逆効果。子どもの気持ちに寄り添いながら、タイミングを見て促しましょう。
できたときはしっかり褒める
「今の“はーい”すごくかっこよかったね!」と具体的に褒めることで、子どもは自信を持ち、積極的に返事をするようになります。
日常の中で取り入れたい!返事を促す声かけ例

- 「〇〇ちゃん、お名前呼んだら“はーい”って聞かせてくれると嬉しいな」
- 「かっこいい返事の声、先生に聞かせて!」
- 「お返事ゲームしよう!誰が一番早く“はーい”って言えるかな?」

子どもは「一番」とか「早い」と言われるのが大好き。ただ早さを競って優劣をつけるのではなく、「声の大きさが一番」「言い方が早かった」などいろいろな【一番】を見つけてあげて下さいね。
よくあるQ&A
Q:遊びに夢中で返事をしてくれないとき、無理にやめさせてもいい?
A:無理にやめさせるより、まずは「気づいたら返事してね」と伝え、返事ができたタイミングで褒める方が効果的です。
Q:返事ができないのは、発達の遅れ?
A:必ずしもそうではありません。性格やそのときの気分も関係するので、焦らず見守ることが大切です。不安な場合は専門家に相談してみましょう。
Q:兄弟がいるとき、それぞれにどう関われば?
A:名前をしっかり呼び分け、個別に声をかけることで「自分も大切にされている」と感じられます。個別の返事をしっかり受け止めてあげましょう。
保護者向けワンポイントアドバイス
返事は「しつけ」ではなく、「心のやりとり」。
「返事をしなさい!」と命令するのではなく、「返事をしてくれると嬉しいな」と気持ちを伝えることで、子どもは安心して応じやすくなります。
また、大人同士でも名前を呼ばれて返事をすることで信頼関係が生まれるように、子どもとの間でも同じようにあたたかい関係が築けます。
まとめ:返事は小さな習慣、大きな成長につながる
「名前を呼ばれて返事をする」というシンプルな行動には、注意力や自己抑制、社会性など、たくさんの“生きる力”が詰まっています。
日々の声かけや関わり方を工夫することで、子どもの可能性は大きく広がります。返事の習慣を、親子で楽しみながら育んでいきましょう。
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