以前に比べ「STEAM教育」という言葉を耳にすることも多くなったのではないでしょうか。
しかし、
- 具体的にどのようなことをするの?
- どんなメリットがあるの?
- お家でもできるの?
など疑問をお持ちの方もいると思います。
そもそも「STEAM教育」って何?という方も多いと思います。
そこで今回はSTEAM教育について、詳しい内容と、メリットやデメリットについて解説していきたいと思います。
【STEAM教育とは】
STEAM(スチーム)教育とは、
- 科学(Science)
- 技術(Technology)
- 工学(Engineering)
- 芸術(Arts)
- 数学(Mathematics)
の頭文字を組み合わせた言葉で、これらの異なる学問分野を統合的に取り入れ、学習プロセスを促進する教育アプローチを指します。
このアプローチでは、生徒が問題解決能力や創造性を育むために、実践的な活動やプロジェクトを通じて学ぶことが重視されます。
例えば、ロボティクスやプログラミングの活動を通じて、生徒は科学的な原理や数学の概念を実際の問題に応用する方法を学びます。
また、芸術やデザインの要素を取り入れることで、創造性を促進し、学習の意味づけを強化します。
STEAM教育は理系や文系のように分野を分けるのではなく、現実世界の課題に対処するための総合的なスキルを育成する点で、21世紀の教育において重要な役割を果たすと言われています。
【STEAM教育のメリット・デメリット】
メリット
STEAM教育のメリットは以下の通りです:
- 総合的な学びを提供
科学、技術、工学、芸術、数学を統合的に取り入れることで、幅広い視野を持ちながら学べる環境を提供します。異なる分野を結びつけることで、より深い理解が可能になります。 - 問題解決能力の育成
現実世界の課題に取り組むプロジェクトを通じて、問題を分析し、解決策を見つける力を養います。実践を重視した学びが、生徒の応用力を高めます。 - 創造性の向上
芸術の要素を取り入れることで、生徒は自分のアイデアや視点を表現する力を育みます。これにより、新しい発見やアプローチを生み出す創造力が促進されます。 - 実践的なスキルの習得
実践的な活動やプロジェクトを通じて、学んだ理論を現実に応用する力を習得します。この経験が学びを深め、現実社会での即戦力につながります。 - 21世紀のスキルを総合的に育成
STEAM教育は、創造性だけでなく、コミュニケーション能力、協力能力、批判的思考能力といった21世紀に必要なスキルも包括的に育てます。
総合すると、STEAM教育は幅広いスキルを育成し、生徒が現代の社会で成功するための準備を支援する効果的な教育アプローチです。
デメリット
STEAM教育のデメリットには以下のようなものがあります:
- 専門性の欠如
多様な分野を統合的に学ぶため、特定の分野に深く踏み込む機会が少なく、専門知識やスキルの習得が不十分になる可能性があります。 - 資源や設備の不足
実践的な活動やプロジェクトには専用の設備や材料が必要ですが、一部の学校や家庭では十分に準備できないことがあり、導入が難しい場合があります。 - 評価の難しさ
実践的な学びが多いため、従来のテスト形式では成果を測りにくく、評価基準が複雑になりがちです。 - 教師の準備不足
幅広い知識とスキルが求められるため、STEAM教育に対応できる教師の育成やトレーニングが追いついていないことがあります。 - 学習の不均衡
自主的な学びが重視される反面、学習スピードや意欲に差がある生徒間で不均衡が生じ、取り残される生徒が出る可能性があります。
これらのデメリットは、STEAM教育の実施に際して考慮すべき課題であり、適切な対策やサポートが必要です。
【デメリットに対する対策や解決策】
専門性の欠如への対策
STEAM教育は多分野を横断的に学ぶ一方で、特定の分野に深く踏み込む時間が不足することがあります。
解決策として、以下のことをあげることができます。
- 分野特化型プロジェクトの導入
STEAMの中でも特定の分野にフォーカスしたプロジェクトを定期的に設定します。例えば、技術分野に興味がある生徒向けにプログラミングコンテストを開催するなど、興味に応じた選択肢を提供することで専門性を深める機会を与えられます。 - 放課後や課外活動の活用
放課後クラブや課外授業で特定分野を深掘りする学びを提供します。例えば、ロボティクスクラブや科学実験教室を開催することで、生徒が興味を持つ分野に集中する環境を作れます。 - 専門家との交流機会の提供
研究者やエンジニアなど、その分野のプロフェッショナルと交流する機会を作ることで、生徒が専門的な知識に触れることができます。
資源や設備の不足への対策
STEAM教育を実践するには、3Dプリンターやプログラミング用PC、理科実験キットなどの専門的な設備や教材が必要です。しかし、これらの設備を十分に揃えられない学校も少なくありません。例えば、地方の小規模校では予算が限られており、十分な機材を購入できず、代替として手作りの教材や無料のオンラインリソースを活用しているケースがあります。
解決策として、地域の企業や大学と連携して機材を共同利用する取り組みや、クラウドファンディングを活用して資金を調達する方法があります。具体的には、ある地方の中学校がクラウドファンディングで3Dプリンターの購入資金を募り、STEAMプロジェクトを成功させた事例が報告されています。このような実践例を参考にすることで、資源不足を補うアイデアを得られるでしょう。
評価の難しさへの対策
STEAM教育は従来のペーパーテストでは評価が難しく、実践的な活動やプロジェクトの成果をどのように評価するかが課題です。
解決策としては以下の方法があります:
- ルーブリック評価の導入
プロジェクトや課題において、明確な評価基準を定めたルーブリックを活用します。これにより、プロセスや成果物を総合的に評価できるようになります。 - ポートフォリオ評価の採用
生徒がプロジェクトを通じて作成した成果物をポートフォリオとして記録し、その成長過程を評価します。この方法は、生徒自身が自己評価する機会にもなります。 - 生徒や保護者との共有
成果を学内外で発表する場を設け、第三者のフィードバックを評価に取り入れます。例えば、STEAMフェスティバルやプレゼンテーションイベントを開催することで、生徒の学びを社会とつなげられます。
教師の準備不足への対策
STEAM教育を効果的に実施するためには、教師が複数分野にわたる知識を持ち、それを統合的に教えるスキルが求められます。しかし、一部の教師は専門外の分野を指導することに不安を感じることがあります。
解決策として、以下のようなアプローチが考えられます:
- 専門的な研修プログラムの導入
STEAM教育に特化した研修プログラムを提供することで、教師が必要な知識とスキルを身に付けられる環境を整えます。例えば、オンラインコースや教育機関主催のワークショップを活用する方法があります。EdXやCourseraなどのプラットフォームでは、無料または低価格でSTEAM教育に関する講座が受講可能です。 - チームティーチングの実施
科学や技術などの分野に強い教師と、芸術やデザイン分野に強い教師が協力して指導するチームティーチング方式を採用します。これにより、個々の教師がすべての分野に精通している必要がなくなり、効果的な教育が実現できます。 - 外部リソースや専門家の活用
学校外の専門家や地域の企業、大学との連携を活用することも有効です。例えば、プログラミングの専門家を招いてワークショップを開催したり、大学の研究室を見学する機会を設けたりすることで、教師だけでなく生徒も新たな視点を得ることができます。
学習の不均衡への対策
STEAM教育は、生徒が自発的に学ぶことを重視しますが、その一方で、一部の生徒が取り残される可能性もあります。
解決策としては、以下が挙げられます:
- 個別指導の強化
生徒一人ひとりの学習進度や興味に応じてサポートを行うために、個別指導や小グループ学習を導入します。これにより、理解が遅れている生徒にもフォローアップが可能になります。 - ピアラーニングの促進
生徒同士で教え合う「ピアラーニング」の環境を整えることで、生徒間の助け合いが促進され、学習の不均衡が軽減されます。 - 段階的な学びの提供
プロジェクトや課題を難易度別に設定し、生徒が自分のペースで学びを進められるようにすることも効果的です。これにより、挑戦的な学びを提供しつつ、学習意欲を損なわない環境が整います。
【幼児期からのSTEAM教育に注目】
文部科学省によってSTEAM教育が推進(出典:STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進|文部科学省)されています。
それに伴って幼児向けのSTEAM教育が話題になっています。
僕もこのSTEAM教育に関する教材を使ってみました。個人教材ですが、勤務する幼稚園でも使ってみたので記事にまとめています。ぜひ読んでみてください!
たとえば小学校では、2020年度からプログラミング教育の必修化(出典:小学校プログラミング教育の必修化に向けて|文部科学省)がはじまりました。
プログラミング教育は、子どもの頃からパソコンなどに触れることによりIT化に抵抗感のない人材を育成するとともに、プログラミング的思考を身につけることが目的と言われています。
幼稚園教育要領とSTEAM教育の関係
☆幼稚園教育要領(出典:幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント|文部科学省)は、「環境を通しての教育」を柱とし、遊びや日常生活を通じて、子どもの興味や関心を引き出しながら、心身の発達や社会性、創造性を育むことを目指します。
☆STEAM教育は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)を統合的に学ぶ教育理念です。問題解決力や創造的思考を養うことを目的としており、探求活動やプロジェクト型学習が中心です。
2つの関係性
- 主体性の重視
幼稚園教育要領とSTEAM教育は、どちらも子どもの「自発的な活動」を重要視します。遊びを通じて学ぶ幼稚園教育のアプローチは、STEAM教育の「探求型学び」と共通点があります。 - 多様な学びの環境
幼稚園教育要領の「環境を通しての教育」は、STEAM教育が重視する多分野の融合的な学びと通じています。例えば、自然観察やものづくりを通じて、科学や数学的思考を育む活動は、両者に共通する要素です。 - 創造性の育成
幼稚園教育では、絵画や工作などの表現活動が重視されますが、これはSTEAM教育における「A(Arts)」に該当し、創造性や感性を育む点で一致しています。
まとめると…
幼稚園教育要領は、STEAM教育の基礎的な部分に通じる要素を多く含んでいます。特に、遊びを通じた学びや、子どもの好奇心を活かした活動は、幼児期におけるSTEAM的な学びの実現に役立つと言えます。
幼児に対して健康な心と体を作り、道徳心や規範意識を芽生えさせることを求めています。ほかにも、自立心や協同性を養い、数量や図形などへの関心・感覚をもつことなども求められています。
【幼児教育への有効性】
好奇心と探求心の育成
幼児期は好奇心旺盛で、新しいことを学ぶことに興味を持っています。STEAM教育は、自然な探求心を活かし、幼児が自発的に学ぶ環境を提供します。
総合的な学習体験
幼児にとって、遊びを通じた体験が学びの主要な形態です。STEAM教育は、遊びを通じて科学的な実験や工作、芸術的な表現を組み合わせることで、幼児が総合的な学習体験を得ることを促進します。
問題解決能力と創造性の育成
幼児期にSTEAM教育を取り入れることで、問題解決能力や創造性を育成する基盤が築かれます。例えば、幼児がブロックで遊ぶことで空間認識や工学的な概念を学び、絵を描くことで想像力や表現力が養われます。
自己表現とコミュニケーション
STEAM教育は、幼児が自己表現し、他者とのコミュニケーションを通じてアイデアを共有する機会を提供します。幼児が自分の考えや感情を表現し、他者との協力や共同作業を通じて学ぶことができます。
総合すると、STEAM教育は幼児期において、好奇心や探求心を活かし、総合的な学習体験を提供することで、問題解決能力や創造性を育成し、幼児の成長と発達を促進します。
【STEAM教育は家庭でもできるの?】
STEAM教育では、子どもが主体的に学びながら、生活に役立つ知識や考える力を身につけることが大切です。また、失敗を前向きに捉え、仲間と協力する経験を通じて、問題を柔軟に解決できる力を育てます。
このSTEAM教育は家庭でも実践することができます。保護者と一緒に料理や買い物をしたり、掃除や散歩をしたりすることもSTEAM教育につながるのです。
それでは具体的な家庭でのSTEAM教育の方法を、以下に示していきます。
実験や工作の実施
家庭で簡単な科学実験や工作を行うことができます。例えば、キッチンで化学反応を観察したり、リサイクル材料を使って創造的なプロジェクトを行ったりすることができます。
観察と探求
家庭の周りの自然や日常生活の中で観察を促し、子どもと一緒に質問を投げかけ、探求することが重要です。例えば、庭や公園で植物や昆虫を観察したり、家の中で身近な物体の性質や特徴を探求したりすることができます。
アートとクラフト
子どもと一緒に絵を描いたり、手工芸をしたりすることで、創造性や表現力を促進することができます。家庭でのアート活動は、STEAM教育の一環として重要な役割を果たします。
デジタルツールの活用
家庭にあるデジタルツールやアプリを活用して、プログラミングやコンピューターサイエンスの基礎を学ぶこともできます。幼児向けのプログラミングアプリやオンラインリソースを利用することで、楽しみながら基本的なコーディングの概念を理解することができます。
家庭でのSTEAM教育は、親子の絆を深めるだけでなく、幼児の好奇心を刺激し、学びの楽しさを体験させることができます。
【まとめ】
STEAM教育はこれからの時代において、注目される学習分野だと思います。
STEAM教育を手軽に取り入れるには、サブスクなど教材に頼るのも1つの方法です。
僕は自分が現在働いている幼稚園で、保育の中にSTEAM教育の考え方を取り入れて、子どもたちがどのような興味を示すか、どのように発展させていくか、模索中です。
少しでも子どもたちの成長の手助けになればと考えています。
コメント