幼稚園や保育園で働いていると、子どもたちの個性の違いに気づきます。
前に出ることが得意な子もいれば、控えめで不安を感じやすい子もいます。
でも、どの子どもも 「やってみたい」「できるようになりたい」 という気持ちを持っています。
僕は特に 「今後もっと伸びてほしい」「育ちつつある」 と感じる子に対して、ひとつのことを 「任せる」 ようにしています。
ただ見守るのではなく、「これは自分の役割だ」と思える経験を作ることで、子どもは自信と責任感を育んでいきます。
今回は、登園時に不安で泣いてしまっていた年長児のKくんが、メダカの餌やりを通して自信をつけ、周りの友だちにも良い影響を与えていったエピソードを紹介します。
登園時に泣いてしまうKくんへの「役割」

「お母さんと離れたくない…」毎朝泣いていたKくん
Kくんは僕が担任していた年長クラスの男の子。
毎朝登園すると不安になり、お母さんと離れられず泣いてしまうことが続いていました。しばらくの間は、お母さんと一緒に部屋まで来るのが日課になっていました。
「メダカの餌やり」をKくんに任せることに
そんなKくんに、クラスで飼っている メダカの餌やり を任せることにしました。
最初は一緒に餌のやり方を教えました。
- どのくらいの量をあげるのか
- あげすぎると水が汚れること
- 1日何回あげるのか
数回練習すると、Kくんは餌やりのルールを覚えました。そこで、僕は 「メダカの餌やりはKくんに任せるね」 と伝え、それ以降は僕から声をかけないことにしました。
最初は「餌やりしていいの?」と確認しに来たり、忘れてしまうこともありましたが、次第に 「自分の役割」 として責任をもってやるようになりました。
「任せる」ことで広がる影響

「どうしたらいい?」Kくんが友だちと関わるきっかけに
ある日、別の子どもが 「僕も餌やりしてみたい!」 と言ってきました。
Kくんは僕のところへ来て 「どうしたらいい?」 と聞いてきました。
僕は 「Kくんはどうしたい?」 と尋ねると、Kくんは少し考えて 「お友達も餌やりしてもいいと思う」 と答えました。
そこで 「じゃあ、餌のやり方を教えてあげて」 とお願いすると、Kくんは僕が教えた通りに友だちに丁寧に説明していました。
こうしてKくんは 「自分ができることを伝える立場」 になり、自然とクラスの友だちと関わるきっかけをつかんでいきました。
Kくんがいない時にも続く「自主性」
さらにある日、Kくんが欠席した時、クラスの子どもたちが 「今日Kくんお休みだから、メダカの餌あげといたよ」 と僕に教えてくれました。
僕が頼まなくても、自分たちで考えて行動していたのです。
Kくんに 「任せる」 という経験をさせたことが、 他の子どもたちの自主性 にもつながっていたことに気づきました。
そして、Kくん自身も少しずつ登園時の不安が減り、行きつ戻りつを繰り返しながらも 笑顔で登園できるようになっていった のです。
大人の役割は「手を出さずに見守ること」

子どもに何かを任せる時、大人はつい 「ちゃんとできているかな?」 と確認したくなったり、忘れていたら 「やらなくていいの?」 と声をかけたくなったりします。
でも、それを 「我慢して見守る」 ことが、子どもにとって大切な学びにつながります。
- 「自分がやるべきことなんだ」 という責任感
- 「どうしたらいい?」と考える力
- 「友だちと協力する経験」
こうした力は、 「子どもに役割を任せる」 ことで自然と育まれていくのです。

まとめ:「できる経験」が自信につながる
Kくんがメダカの餌やりを通して成長していったように、 「子どもに任せる」 ことは、その子の自信につながります。
目立つ子は放っておいても前に出てこれますが、控えめな子どもにも 「できる経験」 を積ませてあげることが大切です。
「この子にはもっと伸びてほしいな」「何かきっかけを作ってあげたいな」と思った時、 ひとつの役割を任せてみること から始めてみるのはいかがでしょうか?
子どもたちは、自分の力で成長していくもの。
僕たち大人は、その環境を作り、見守ることが大切なのかもしれません。


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